教育を海外に輸出?「日本型教育」の魅力とは

授業・生徒指導

海外で「日本型教育」が注目されるようになり、日本国内でも文部科学省や外務省が中心となって諸外国における導入を推し進めようとしています。そこでは、教育内容だけにとどまらず、「掃除当番」や「給食当番」といった仕組みが注目されています。

世界有数の貿易大国日本が輸出しているのは、工業製品だけではありません。さまざまな分野における日本の技術も、広く海外で展開されています。そのなかで、教育界でも現在注目されている取り組みとして、文部科学省が中心となって進めている「日本型教育」の輸出があります。これは、文科省が経済産業省や外務省、国際協力機構(JICA)や日本貿易振興機構(JETRO)、地方公共団体、大学・高専、NPO、民間企業などとともにオールジャパン体制で情報を共有し、日本の教育を海外展開しようとする試みです。「日本型教育」とはどのようなものなのでしょうか?

なぜ「日本型教育」が注目されるのか

日本は第二次世界大戦後、奇跡的ともいえる復興を果たしました。その戦後の経済発展を支える重要な役割を担っていたのが日本の教育だと言われています。そして、学校で行われる「授業」の方法はいうまでもなく、日本の教育に関する諸制度、そして関連するさまざまな活動も含めて大きな役割を果たしていたのではないかということが海外でも注目されるようになっています。

例えば、文部科学省の資料「官民協働プラットフォームを活用した日本型教育の海外展開」(PDF)によると、インドでは小学校・中学校という日本の「学校制度」について注目されており、ミャンマーでもテイン・セイン首相自ら日本の教育制度をふまえたしくみの構築を指示しているとのことです。また、エジプトでは道徳観・倫理観を養う教育として日本の教育方法が注目されています。タイにおいても、高専のしくみをまねた制度の導入が検討されるなど、「日本型教育」に幅広い地域から注目が集まっています。

日本人が気づかない?「日本型教育」の特殊性

日本で暮らし、日本の教育を受けた私たちには当たり前のことでも、世界的には特殊であるという印象を与えているのはどのようなことでしょうか。よく話題になるのは、昼休みや放課後に行われる掃除です。日本では児童・生徒が行うものという一般的な感覚がありますが、多くの国において教室の清掃は専門の職員や業者によって行われるものであり、児童・生徒が行うことはあまりありません。しかも、日本の教育においてはほとんどの場合「掃除当番」という概念があり、特定のメンバーではなくクラスの全員が掃除を担当することも外国の方からは珍しく見えるようです。また、給食についても、制度そのものは多くの国で取り入れられていますが、児童・生徒自らが「給食当番」として配膳などにたずさわるのは日本独自のやり方とも言われています。そして、これらの「掃除当番」や「給食当番」といったしくみが、基本的には全国一律で実施されているということが諸外国からすると驚かれることも多いようです。

「日本型教育」の海外展開事例

まだ事例は少ないのですが、例えば東京学芸大学は日本人学校に教員を派遣する協定をタイと締結しています。前述のように、タイでは「日本型教育」への関心が非常に高まっており、この包括連携協定でも、タイの教育省や教育機関と交流を行い、日本型教育の普及を目指しているようです。文部科学省も2016年8月に「日本型教育」についてのシンポジウムを行っており、非常に力を入れていることが伺えます。

アクティブ・ラーニングの導入が盛んに推奨されている昨今、日本の従来の教育が、ともすれば否定的に捉えられることは少なくありません。しかし、日本で実施されてきたさまざまな制度については、多くの国において肯定的に評価され、導入が検討されているという事実についてもきちんと知っておく必要があります。文化の違いもあり、「日本型教育」がそのまま外国で実施されているわけではありませんが、どのような観点から諸外国で「日本型教育」が導入されているのか知ることは、私たちがふだん何げなく行っている指導を振り返る際に非常に有効な手段になりうるといえます。


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