
受験生への進路指導は、進学する学校を一緒に選択するだけでなく、生徒が将来何をしたいのかを見据えた指導が必要です。学校の進路指導部は進学実績や就職先のデータを持っているだけでなく、学校全体の進路指導やキャリア教育の核となる部署。進路指導部との連携を図り、キャリア教育やインターンシップなどの体験を通して実現可能な進路を生徒が見出していけるよう、サポートしていきましょう。
中学3年生や高校3年生のクラスを受け持つことになったとき、一番大きな課題となるのが進路指導です。受験期を迎え、進路を決定するための大切な時期ではありますが、まだ自分の進路が決まらず悩んでいる生徒も少なくありません。そんな生徒たちにどのような進路指導をしていけばよいか、事例を参考にしながら、より良い方法を考えてみましょう。
「何がしたいのか?」を問いかける
中学生にしても高校生にしても、学校卒業後に進学する生徒がほとんどです。しかしその後、社会に出てからどのようなことがしたいのか、どんな職業に就きたいのかまで考えながら進学先を決定する生徒はそう多くはありません。進路に悩んだ生徒がいたら、将来のことを検討させる大きなチャンスです。進路指導では、どの学校に行きたいかだけでなく、「どんな職に就きたいのか」「社会に出て、何をしたいのか」といった、将来を見据えた話を進めていきましょう。そうすることで、本人の意志も確認しやすくなり、より的確な進路指導が行えるのではないでしょうか。
進路指導部との連携を図ろう
学校内の校務分掌において、進路指導部では学校の進学実績や、就職先などのデータを集めるのが大きな役割。近年、文部科学省が推進しているキャリア教育では、勤労観や職業観を育てるために、学ぶことと働くことを関連づけながら、自己の生き方を自らで考えるような生徒への働きかけが重視されています。そうした取り組みにおいて中心となって動いているのが、まさに進路指導部なのです。
実際に将来につながるための指導を行うためにも、進路指導部との連携は不可欠なこと。インターンシップや職場体験などを利用し、学年単位で具体的な進路指導を進めていきましょう。特に私立学校では、幅広い進路選択を進めるところが多く、環境によって状況が異なります。例えば中高一貫校では、中学在学中に高校の先取り教育を行うなど独自のカリキュラムを実施している学校も多くみられます。大学と提携・併設している私立高校では、その大学への合格を保持しながら他大学の受験に挑戦することを勧めるなど、自由度の高い進路設定が可能です。このような私立学校独自の進路指導は、進路指導部と学年、担任の連携があってこそ成立するもの。生徒に進路指導を行うとき、担任・教科担当としてわからないことがあれば、進路指導部のドアを叩いてみましょう。親身にアドバイスしてくれる、進路指導部の教員がいるはずです。
ホームルームを使ったキャリア教育の実践例
進学だけでなく、社会人となったときの自己実現を考えるキャリア教育。では、生徒たちには具体的にどのような取り組みを行えばよいのでしょうか? 文部科学省が推奨している例として、3つのステップを利用した実践方法を紹介します。
ステップ1:グループでの事例学習~具体的な将来を挙げて検討する~
クラス内で複数のグループをつくり、具体的な職業を設定しながら、進路を検討する学習方法があります。例えば、看護師を目指すAさんを設定し、将来、資格を取って就職するためには、どのような選択を行うべきかを検討していきます。看護師になるためにはどのような学校、大学へ進学すればよいのか、また、関連する学校へ受験する際に求められる科目は何か、そのために、選択するべき適切な科目はどれか、といった具体的な内容をグループで考えるというものです。最終的には、自身がAさんにアドバイスをするとしたら、どのようなことに注意すればよいか、というところまで進めます。生徒から積極的に発言しやすい雰囲気をつくり、教員ではなく生徒主導で進めるのが理想的です。進路決定に、何が正解ということはありません。自由な発想を受け入れながら、生徒が自発的な態度で討論に参加できるようにサポートしてみましょう。また、進路に悩みを持つ友人にアドバイスするシーンを想定することで、無責任な発言を避け、相手を思いやり、相手の良い点を見るといった指導にもつながります。
ステップ2:個別の事例学習~自身の進路を見据える~
グループ学習のあとは、自身の進路について検討する時間です。ステップ1の流れを前提に、今度は自分の志望する職業やそのために役立つ進学先などを挙げ、ワークシートに記入していきます。具体的で細やかな想定をさせるためにも、受験に必要な科目や、現在の学力などの情報も書き加えられるようにしておきましょう。グループ学習のなかで、科目選択の大切さを学んでおり、自分に置き換えた見直しと検討の時間を設けます。課題を明確にしたうえで、どうすれば改善できるかまでを考えさせること。書き込んだワークシートを使って、グループ内でアドバイスを記入するのもよいでしょう。
ステップ3:自分の課題を整理する
学習を振り返り、科目選択の注意点、進路実現のために何を重視するかを確認させましょう。ワークシートのアドバイスに目を通しながら、改めて自分の課題を整理することが大切です。明確になった生徒の課題を、家庭と連携をとりながら生徒にフィードバックすることで、より具体的な進路調整が可能になります。一回の授業で終わるのでなく、その後の面談にも活用したいものです。
進学のその先へ
進路指導は、ただ生徒が進みたい学校や学部を選択するだけでなく、その先将来どのよう職業に就いて生きていきたいかというキャリア教育に移行しています。将来を見据えたうえで、インターンシップなどの実際の体験を通し、より具体的で実現可能な進路を考える必要があります。生徒の意志を確認しながら、ともにより良い進学先を見出していく姿勢が大切だといえるのではないでしょうか。