生徒への「怒り」をコントロール。アンガーマネジメントを身につけよう

授業・生徒指導

アンガーマネジメントとはアンガー(怒り)について知り、コントロールするための手法です。生徒同士の関係はいうまでもなく、教員と生徒の関係性や教員間の関係性においても、アンガーマネジメントを学ぶことで良好な関係を築くことができると考えられます。教員の言動が瞬時に広まって問題となることもある現状においては、アンガーマネジメントの重要性が高まっているといえます。

授業中に生徒に対して必要以上に厳しく指導してしまい、生徒との関係修復に時間がかかったという経験はないでしょうか? また、クラス内で生徒同士のちょっとした言い合いが激しい口論にエスカレートしてしまい、生徒たちが落ち着くまでかなりの時間がかかってしまったことがあるかもしれません。アンガーマネジメントと呼ばれる手法を用いれば、このような問題に上手く対処できるようになります。アンガーマネジメントについて学んでみましょう。

アンガーマネジメントとは何か?

アンガーマネジメントとは、「1970年代にアメリカで始まったアンガー(イライラ、怒りの感情)をマネジメント(上手に付き合う)ための心理教育」(日本アンガーマネジメント協会の説明による)のことをいいます。自分の「怒り」について理解を深め、上手に管理することで、よりよい人間関係を手に入れる手法なのです。上司と部下、同僚同士といった職場の人間関係や、家庭内の人間関係を円滑にするために「怒りを管理する」という発想が生まれました。アメリカでは、スポーツ選手、医者、政治家など幅広い分野で用いられています。このアンガーマネジメントを、教員と生徒の関係や、生徒同士の関係など、教育の場でどのように活用したらいいでしょうか?

「怒り」を知るための実践型授業の試み

アンガーマネジメントを授業に用いた実験的な試みとして、岡山県の中学校の事例があります。クラスの友達同士で、相手の表情、しぐさ、声などから感情を読み取るロールプレイングを行ったり、自分が日常生活で「怒り」を覚えたのはどのようなときかをワークシートに記入したりといった活動を通じて、アンガーマネジメントのスキルを身につけることを目的とした実践型の取り組みです。この授業に参加することで、「怒り」がどんな感情なのか知り、怒りに対処する方法を学べます。授業実施後、生徒たちは「相手の感情に気をつけて話すようになる」「怒りの感情について理解が進む」「怒りをコントロールする方法が身につく」などの成果を得たと報告されています。相手の感情を理解したうえで行動することでトラブルを上手に回避する方法を手に入れたことは、生徒たちにとっては大きな財産となったはずです。教員の視点からみれば、円滑な学級経営を行うために、アンガーマネジメントは非常に有用な方法であるといえます。

いろいろな場面に応用できるアンガーマネジメント

先に述べた岡山県の事例では集団授業においてアンガーマネジメントを導入していますが、個別に行われる生徒指導の際にもアンガーマネジメントは効果があると考えられます。具体的には、何らかの問題行動があった生徒について、一方的に怒るのではなく、アンガーマネジメントの手法によって生徒の感情について教員が理解することで、うまくトラブルを解決し、生徒との距離を縮めることが期待できます。さらには、生徒間、教員と生徒という関係だけでなく、職場の教員同士の関係においてもアンガーマネジメントが役立つでしょう。多くの人間が集まり複雑な人間関係が形成される「学校」という場において、深刻なトラブルを防ぐために、アンガーマネジメントは今後、より重要になるのではないでしょうか。

一昔前と異なり、現在では教員の発言や行動がインターネットを通じて瞬時に広まってしまいます。もちろん怒りは自然な感情ですが、教員が怒りに任せた指導をしてしまうと、後で生徒に対して謝罪したとしても事態が収拾できなくなってしまう可能性も否定できません。アンガーマネジメントについて知っておくことは教員にとって、自分の身を守るという側面もあるでしょう。

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