
BYODとは私物のパソコンを学校のネットワークに接続して利用することをいいます。なれたデバイスで仕事ができるというメリットと、ウィルスの被害がもたらされるリスクが増えるというデメリットがあります。スマートフォンやタブレットが普及した現状では、ネットワーク構築の段階から考えなおす必要があるといえます。
住所やテストの点数など、学校のパソコンには生徒の個人情報がたくさん保存されています。セキュリティについて敏感であるべき職場だと言えますが、最近は私物のデバイスを持ち込んで学校のネットワークに接続する機会が増えています。メリットとデメリットを踏まえたうえで、セキュリティ対策の重要性について改めて考えてみたいと思います。
BYODとは何か
BYODとは、Bring Your Own Deviceの略称で、職場のネットワークに、私物のデジタル・デバイスを接続して使うことをいいます。一般の職場ではしばらく前から注目を集めているトレンドですが、教育の場でも、学校内のネットワークに私物のノートパソコンやタブレット、スマートフォンなどを接続して、授業や事務作業に活用する事例が増えています。
BYODの利点としては、使い慣れた私物のノートパソコンで作業できるわけですから、職場で支給されたもので作業するよりも効率が上がることが挙げられるでしょう。異なるパソコンで同じ環境を再現しようとしても、なかなか難しいという経験をされた人も少なくないと思います。BYODであればパソコンを持ち帰ることにより、自宅でも同じ環境で作業ができるわけですから、急ぎの仕事の際には大きく役立ちます。
BYODのデメリット
私物のデバイスを学校のネットワークに接続するわけですから、これまでなら接続が認められたパソコンだけにセキュリティ対策を行えばよかったのが、個々のデバイスに対しても入念なセキュリティ対策をする必要が発生するというデメリットがあります。こういった対策には手間もコストもかかりますし、予期しないウィルスの影響を受けるリスクも高まってしまいます。このため、BYODは「災厄をもたらす(Bring Your Own Disaster)」といわれることすらあります。
課題はBYODのルール作り
リスクを承知したうえで、きちんと対策をとってBYODを認めている学校もあります。特に、インターネット接続用の無線LANが設置されている学校では、教員が授業中に私物のスマートフォンやタブレットを用いて資料映像を生徒に見せるといった、効果的な活用法を見い出している事例も見られます。このような学校では、成績に関わるデータの入ったパソコンについては、限定されたネットワークを構築して私物のデバイスからの接続を認めないという形でセキュリティを保持しているようです。
BYODを認めるか認めないかという二者択一的な考えではなく、用途を限定したネットワークを複数構築し、BYODでの接続を認めるネットワークと認めないネットワークを分けるという対処が求められているといえます。なお、近年、公立学校において都道府県レベルのネットワークが構築されていながら、外部からアクセスされてしまったという問題も発生しています。私立学校も決して他人事とはいえない状況であり、より強固なセキュリティの構築と、BYODについてのルール作りが早急の課題となっているのです。
BYODはコンピュータの世界ではもはや新しい用語ではないのですが、スマートフォンやタブレットの普及、そして無線LAN等の設置がようやく進みつつある学校現場においては、これから議論を深めていく必要があるとといえます。「これくらい大丈夫だろう」と考えて安易に自分のパソコンを学校のネットワークに接続すると、思わぬ影響を与える可能性があります。教員一人ひとりがBYODのメリット・デメリットについて考えるのと同時に、私物のデジタル・デバイスの利用に関する学校全体でのルール作りが急がれています。