
教育現場では教員の指導力不足が問題視されています。指導力不足教員は公立では教育委員会が、私立では学校内での基準に基づいて判断されます。教員に求められる学習指導力や生徒指導力、学級経営力などを向上するために、個人の努力はもちろん、学校の枠組みを越えたスキルアップの取り組みを考えたいものです。
子どもの学力低下が問題視されるなかで、指導力不足の教員が増えているのではないかとも指摘されています。今、教育現場で教員に求められる指導力とは、一体どのような能力なのでしょうか? また、どのようにして能力の向上をはかればよいのかについて私立学校の取組みを例に挙げ紹介します。今後の学力向上につなげるため、取り入れていきたい指導力向上の対策について考えてみましょう。
指導力不足の教員とは?
公立では、「指導力不足教員」の定義は各教育委員会によって定められますが、私立教員の場合は、各学校の裁量に任されます。奈良県教育研究所による「指導が不適切である教諭等に関する考察」によると、指導改善を必要とする教員の特徴は以下のようなものが挙げられています。
- 指示に一貫性がない
- 説明が焦点化できない
- 子どもの活動が少ない
- 時間内に予定の内容が終わらない
- 児童生徒が達成感を味わえない
- 学習内容が不明確
そのほか、学校経営が適切に行えない場合も、指摘されるポイントになります。実際に、指導力不足と指摘された場合、教員の任命権者である学校長や理事長、または上司にあたる主任などが対象となる教員へ直接的な指導を行われます。学校によっては、復職プログラムのようなシステムを採用し、数年間担任から離れるといった措置がとられます。
教員に求められる指導力とは?
教員に求められる指導力とは大きく分けて学習指導力、生徒指導力、校務分掌力、保護者対応力の4つに分類されます。学習指導力とは、授業においてしっかりと指導計画を立て、工夫して授業を展開し、生徒たちに学習内容を理解させられる力のこと。生徒指導力は自校の生徒を理解し、効果的に指導する能力が確認されます。問題行動を起こした生徒にはきちんと向き合い、悩みを抱え込まないように細やかな観察力で生徒と接するために必要なスキルといえます。また、学校における校務、進路指導部や生徒指導部など全校指導体制の一員として自分のなすべき役割を果たせる校務分掌力は学校経営に欠かせません。加えて、保護者からの要望や意見を受け止め、適切に対応しながら、生徒の指導において連携・協力できる関係性を築く保護者対応力も、担任を持つ場合には必須の能力でしょう。どれも細やかで複雑なものではありますが、こうした能力を身につけていくことが指導力のスキルアップにつながるのです。
教員の指導力を向上するために
前項であげた学習指導力や生徒指導力を向上させるためには、個人の努力だけではできる対策が限られます。学校全体での取り組みはもちろん、学校の枠組みを超えたサポートが求められています。すでに実践する自治体や連合会もあり、今後の変化が期待されます。例としては、大阪府の私立中学高等学校連合会の活動が挙げられます。スキルアップにつながる研修会や講演会を定期的に行い、地域全体で教員の指導力向上を目指しています。その内容も幅広く、教育研究者による「生徒のやる気を引き出すコーチングの極意」を学んだり、「クラブ活動の指導で学んだ生徒指導」と題して現場の教員による体験談を発表しあったりと、情報を共有できる機会を設けているのが特徴です。個別の指導も大切ですが、地域全体で意識を高めるような取り組みも大切なのではないでしょうか。
教員だって勉強することが大事!
理想を持って教員となり、現場での努力を続けるなかで、戸惑い、迷うこともあるでしょう。どれだけ経験を付けても、自分の指導力に絶対の自信のある人は少ないのではないでしょうか。指導力不足の教員が現場で増えることは、生徒たちに適切な教育的指導が行えないという不利益につながります。教員一人ひとりが常に自己点検を行うとともに、仲間の教員と研修などで積極的に学びながら、お互いに指導力を高める環境を築きたいものです。