
高大接続は現状の問題点を踏まえ、高等学校教育・大学教育・大学入学者選抜を連携して変えていき、必要とされる学力を養成していこうとするものです。大学入学者選抜の変化にばかり目がいきがちですが、その背景にある「これから身につけるべき学力」をまず理解する必要があります。
高大接続の本来の意味
2016年3月、文部科学省の高大接続システム改革会議において、「最終報告」が発表されました。この報告では、教育の現状について、高校までの学習で十分な能力が身についていないことや大学入試が知識偏重になってしまっていることのほか、大学での学習においても従来型の知識を伝える講義が多く、社会で求められている能力を育成できていないということが問題点として挙げられています。
そして、一貫した理念の下に、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜を連携させて、問題解決に取り組むことの重要性を訴えています。これを「高大接続」と呼ぶのです。そのなかで、身につけるべき学力の3要素として、以下を挙げています。
・十分な知識・技能
・それらを基盤に答えが一つ に定まらない問題に自ら解を見いだしていく思考力・判断力・表現力等の能力
・これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度
それぞれの課程でどう変わる?
それでは、それぞれの教育課程で具体的に何か変わるのでしょうか。順番に見ていきましょう。
高等学校教育
高等学校教育では、アクティブ・ラーニングの手法を用いた授業を重視することで、先に述べた、学力の3要素の養成に力を入れることになります。そして、それらの定着を図るため、高等学校教育の多様性に対応した「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を導入することが検討されています。
大学教育
大学教育においては、「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー)、「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)、「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の三つの方針を策定・公表し、多様な学生が新たな時代に適応した大学教育を受けられるようにすることが求められています。
大学入学者選抜
高等学校と大学をつなぐ大学入学者選抜においては、それまでに培ってきた力をどのように評価するのか考えることが求められています。考える力を重視した評価がなされるようになり、知識を習得しただけでは正解を導き出せなくなるような選抜方式になるといわれています。また、「思考力・判断力・表現力」を中心に評価する「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を国が創設することになっており、これが「センター試験の廃止」といわれているものです。
将来を見据えて今から準備を
高大接続について見てきました。今後は、これらの取り組みが同時並行で進められます。ほとんどの人が高校で学び、多くの人が大学に進学するようになった今、高等学校と大学の双方で教育内容について再定義が求められているといえます。
「センター試験がなくなる」ということばかり注目されがちな高大接続ですが、大学入試だけでなく高校の授業や大学の講義も大きく変わろうとしていることが理解いただけたかと思います。すでに、将来を見据えてアドミッション・ポリシーの変更やそれに伴う学部改組、カリキュラムの改革を行っている大学もあります。この背景には、現時点で多く受験生を集めている大学であっても、人口が減少する傾向の日本において改革に取り残されるとこの先どうなってしまうかわからないという、大学が抱いている危機感があります。
教員も、直接受験生を担当しているならばいうまでもなく、そうなでなくてもこの高大接続について、今一度自分なりに理解しておく必要があるといえるでしょう。