
海外の教育制度は、日本とは大きく異なる場合が多くあります。フィンランドなど国際的に高い評価を得ている事例もあれば、アメリカのように個人主義の考え方に基づいて飛び級制度を取り入れている国も。教育制度の背景には国ごとの文化の違いがあり、そのまま日本に当てはめることはできませんが、それぞれの特徴を理解し、参考になるヒントを探してみましょう。
日本とは異なる教育制度によって、国際的に高い評価を得ている事例が海外にはたくさんあります。もちろん、各国の教育システムには、それぞれの文化や宗教が背景にありますから、すべての方法を日本に導入できるわけではありませんし、導入したことで必ず目に見える効果が上がるとは限りません。それでも、今後の日本教育のあり方を考える上で、参考になるヒントは得られるのではないでしょうか。日本の教育とは対照的に語られることの多い、いくつかの国の事例について見ていきたいと思います。
フィンランド:「落ちこぼれ」を作らない教育システム
OECD生徒の学習到達度調査(PISA)で常に高評価であるフィンランドの教育事情は、日本でも模範とすべき理想のあり方としてよく話題になります。フィンランドの教育の特徴としては、「機会の平等」と「自主性の尊重」を理念に掲げ、成績が下位の生徒への個別教育のケアが充実していることが挙げられます。そして、義務教育段階での留年制度も特徴です。親の収入に関係なく、すべての子どもに教育を受ける機会を平等に与えるとともに、個々の学習スピードに合わせてきめ細やかに対応することで、落ちこぼれをつくらない教育システムになっているといえます。また、ネット環境が充実しており、近年注目されているゲーミフィケーションや反転教育などの下地も整いつつあります。学習環境をさらに充実させるための新しい取り組みが、今後も次々と導入されていくと考えられます。
アメリカ:個人の学習スピードに合わせた「飛び級」制度
アメリカの教育事情も、しばしば日本の教育事情と比較して語られます。アメリカの教育で特徴的なのは、フィンランドと同様に義務教育段階で留年があるということです。一方で、進級についての年齢制限がないため、いわゆる「飛び級」で学んでいる生徒もいます。個々人の理解度に合わせて、たとえ同じ年齢でも受ける授業が異なる可能性があるのです。このあたりが、集団の和を重んじ良くも悪くも「横並び」と称される、日本の教育との大きな違い。アメリカでは教育制度においても個人主義の精神が尊重されているといえます。また、日本では多くの生徒が通っている「塾」があまり普及しておらず、その分学校からの宿題が多くなっているという点を挙げることもできるでしょう。このほか、高等学校の段階から、生徒の興味や関心、希望する進路に応じて非常に多くの講座から授業を選択できるようになっているのも特徴です。
中国:軍隊よりも厳しい学校?
中国の教育についても見ていきましょう。義務教育が9年という制度は日本と変わりませんが、特徴的なのは大学入試の際に行われる全国大学統一入試(旧全国普通高等学校招生入学考試、通称「高考」)です。日本にも全国の大学進学希望者が一斉に受けるセンター試験がありますが、日本の大学入試制度と異なり、中国ではこの「高考」の結果のみで大学の合否が決まります。受験生は「高考」を受験する前にどの大学を志望するかを決める必要があるため、自分の実力に合わせて慎重に志望校を選びます。中国では非常に重要な意味を持つこの「高考」で高得点を取るために、軍隊よりも厳しいといわれる高等学校に自分の子どもを入学させたいと希望する親も少なくありません。なお、近年では、ごく一部ではありますが「高考」とは異なる独自の試験を実施する大学も設置されるようになっています。
フィンランド・アメリカ・中国の教育事情について概観しました。繰り返しになりますが、教育はさまざまな背景のもとに成り立っています。何に重点を置くのかは国によって異なりますが、生徒がよりよい未来に暮らせるための教育について、各国の事情をふまえて考えてみてはいかがでしょうか。