
「臨界期」と呼ばれる時期の子どもへ英語教育を行うことは、子どもの能力獲得にメリットがあることがわかっています。しかし、実際の小学校の英語教育では、誰が教えるのか、何を教えるのかが統一されていません。早期英語教育のメリットと、デメリットについて紹介します。
文科省の発表により、2020年までに小学3年生からの英語教育スタートが決定しました。早期の英語学習によって、グローバルに活躍できる人材を育成することが目的で、世間の関心も高まっているところです。その一方で、母国語である日本語もままならない低学年での英語教育について疑問視する声も少なくありません。小学生から始める英語教育のメリット・デメリットについて紹介します。
早期の英語教育のメリットとは?
子どもは幼児期のうちから、周囲の人の話す言葉を音声として耳で聞き、言語を習得しています。そのため、早期の言語教育は、身につきやすいというメリットがあります。小学校3年生からとされるのは、習得した言語をそのまま発音することのできる年齢である、9~10歳ごろまでの「臨界期」に合わせたものです。この時期に学ぶことでよりネイティブに近い発音ができるようになるといわれています。
また、好奇心の強い低学年から英語学習を始めることで、言語や文化への興味や関心が高くなるようです。この時期はまだ日本語を学ぶ過程であり、母国ごとの同時教育によってより高い効果が期待できるとされています。
英語の授業をどう進める? 教師が抱えるデメリット
さまざまなメリットがある早期英語教育ですが、実際に授業を受け持つ教師にとって、多くの課題を抱えています。すでに英語教育が定着した中学校では、英語を専科とする教員やALTが教科書を使った授業を進めています。しかし、小学校では指定の教科書もなく、教師側の環境が整っていません。2011年から小学5・6年生で年間35時間「外国語活動」が「必修化」となりましたが、いまだ教科書もなく、補助教材となる英語ノートの利用も、使用は自由となっています。
また、小学校では誰が英語を教えるのか、ということが最も深刻な問題として挙げられます。担任や、NT(Native Teacher)と呼ばれる外国人講師が授業を行う場合もありますが、小学校教師の資格を取得する過程で専門的な英語の知識は学ぶ機会はほとんどありません。そうした状況のなかで、生徒が理解できる英語教育を行えるかが問題です。NTを招いても通訳をできる人がおらず、せっかくの授業が成り立たないこともあるようです。小学校教師が抱える不安や問題は大きなデメリットといえるでしょう。
小学校の英語教育が抱えるさまざまな課題
英語教育といっても、現状では国際理解教育との区別がわかりづらい部分もあるようです。外国語の時間には、英語のゲームや音楽に触れるだけという授業が実施されているところもあります。
また、英語には三単現のS、複数形のS、主語が変わるとbe動詞が変わるなど、日本語にはない特殊な文法があります。基本となる文法を教えないまま、定型文の反復練習をさせるだけでは、生徒によっては混乱してしまう場合も。会話やコミュニケーションに偏った小学校の英語教育はいまだ統一性がなく、具体的なガイドラインがないままに現場は対応を求められているのです。
メリットを活かした早期の英語教育実現のために
多くのメリットを持つ早期の英語教育実施が決定するなかで、必要なガイドラインの制定、英語教育を行える人材の確保はまだまだ大きな課題です。小学校での英語教育のメリットを活かすためにも、現場の実情と文科省の理想とする英語教育との溝を埋め、2020年までに小学校での英語教育が何を目指して行われるべきなのか、しっかりと定めていくことが必要といえるのではないでしょうか。